腫瘍内科医を目指す方へ

腫瘍内科研修のお誘い

当科は日本臨床腫瘍学会から認定されたがん薬物療法専門医の研修施設です。専門医試験受験のためには基幹学会(内科学会・外科学会など)の専門医資格が必要ですが、さらに臨床経験として学会認定研修施設での臓器横断的ながん治療を通して、エビデンスに基づいた安全ながん薬物治療、支持療法、および緩和ケアの習得が要求されております。
当科は2013年に日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医研修施設に指定されており、充分な支持療法と緩和ケアを行いながら、患者さんのQOLを重視したがん薬物療法を目標に、各診療科医師や病棟/外来/通院治療室スタッフとカンファレンスを行いながら治療を行っております。
 
腫瘍内科医は、欧米ではがん治療のcommanderとも言われているようです。本邦では、がん薬物療法を中心にしたコーディネーター的な役割を期待されてきました。緩和ケア、放射線治療、外科的治療に関する充分な知識を持ち、適切な方向へ患者さんを導くという意味ではそれでも良かったのですが、免疫チェックポイント阻害剤、分子標的治療薬の開発により、がんの治療自体が tumor-agnostic(臓器横断的)になってきており、さらに急激な治療方法の進歩により、従来の臓器別診療科では、がん薬物療法が手に負えなくなってきている現実があります。
腫瘍内科医からみると、たとえば、肺がんも胃がんも頭頸部がんも同様の薬剤を使用している場合は、原発巣がどの臓器であろうとも、副作用管理も含めた薬剤選択に苦労はあまりありません。原発臓器特有の症状に関して、担当診療科にしっかり相談しながら、時には手術や処置など専門的な局所治療をお願いしながら、広い視野で治療を行う必要があります。
根治手術を目標にした術前化学療法や、治癒を目指した術後補助療法に関しては手術担当診療科が行うことが適当かと思いますが、そのような場合でも、合併症などで通常治療が困難な症例などでは治療に協力もしくは担当しています。
 
がん患者さんのさまざまな症状に対する緩和医療に関しては、初診時から積極的に治療を行っています。当科に紹介される患者さんの70%以上は疼痛や吐き気、不眠や不安など肉体的・精神的な症状を伴っており、ご家族においても不眠などを訴えることは大変多いので、初診時に症状に対する投薬などを開始すると同時に、緩和ケアチームの介入を行っています。ご家族に対しても同時にもしくは別の日に改めて診察をさせていただき、投薬・心理学的介入、精神腫瘍学的介入を緩和ケアチームの活動を通して行っております。
腫瘍内科の患者さんは入院中も緩和ケアチームの介入が続き、積極的な抗がん治療が終了した場合には、可能な限り在宅療養ができるようにソーシャルワーカーの介入も早期から開始します。
腫瘍内科以外の患者さんに関しては緩和ケア外来を緩和ケア担当看護師と同伴するかたちで行っています。
 
2020年に当院はがんゲノム診療関連施設に認定され、がんゲノム情報センター(C-CAT)を通して、がんゲノムシークエンス検査を行うことが可能になりました。検査をするにあたり専門的な知識が必要なため、腫瘍内科がこれを担当し、院内/院外の患者さんの紹介を受け付けて、ゲノム検査についての説明と結果の説明を”ゲノム診療外来"の中で行っています。
  
このような緩和ケアとがん薬物療法を並立して行う診療内容に関して、ヨーロッパ腫瘍内科学会から日本国内では5番目の”ESMO Designated Centre of Integrated Oncology and Palliative Care” として認定されました。ESMO Accredited Designated Centres
 
ときには先端的ながん治療に従事することで医学の進歩に寄与し、ときには患者さんやご家族の気持ちや身体に寄り添って地域での療養生活を支える、包括的ながん治療に従事するための研修として当科はうってつけのように考えます。
どうぞ、お気軽に、担当までご連絡いただければ幸いです。

お問い合わせ先 〒396-8555 
長野県伊那市小四郎久保1313番地1
伊那中央病院 総務課総務係 担当 : 有賀 ・ 辻
電話 : 0265-72-3121
FAX : 0265-78-2248
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主な多職種カンファレンス

通院治療室カンファレンス(看護師・薬剤師):毎日16:30
緩和ケアカンファレンス/病棟回診(精神腫瘍科医師・看護師・薬剤師):月曜日10:00
緩和ケアスタッフ・通院治療室カンファレンス:火曜日8:30
呼吸器カンファレンス(呼吸器外科・呼吸器内科・臨床病理科・薬剤部・緩和ケア看護師):第2・4火曜日
婦人科腫瘍カンファレンス(婦人科医師・緩和ケア看護師・通院治療室スタッフ・婦人科病棟スタッフ・婦人科外来看護師)
消化器カンファレンス 【消化器外科医師 外来看護師 腫瘍内科医師 薬剤師 通院治療室スタッフ 緩和ケア看護師】 
キャンサーボード(担当診療科・臨床病理科・緩和ケア看護師・薬剤部など):第3火曜日
腫瘍内科病棟カンファレンス(病棟看護師・病棟薬剤師・担当PT・担当MSW):水曜日15:00
がんの臨床勉強会 腫瘍内科・関係診療科医師、オンコロジーユニット看護師、緩和ケアリンクナース、薬剤部:第3月曜日

がんの臨床勉強会

病棟・外来スタッフ、薬剤部、MSWなど多職種チームでの治療の向上や問題点の解決のために、月に1回、がん薬物療法と緩和ケアについてそれぞれひとつずつテーマを決めて講義やディスカッションを行います。2020年1月には60回になりました。
最近のテーマを紹介します。

2019年に取り上げたテーマ
1月 
2018年入院死亡症例の振り返り
2月
なぜ一度始めた人工呼吸管理はやめられないのか?”すれ違う医者と患者”より
3月
❶ 肺がん患者の治療選択過程についてのエッセイ  研修医 松田先生
❷子宮肉腫症例の緩和ケアについて 緩和ケア認定看護師 吉田さん
4月
❶ 経口抗がん剤の管理と相互作用のまとめ 腫瘍内科 竹内
❷胃がん肝転移の在宅移行過程について 緩和ケア認定看護師 吉田
5月
❶ セミノーマの治療 腫瘍内科 竹内
❷積極的鎮静をした終末期大腸癌症例の検討
6月
高齢者や状態の悪い人への免疫療法について
IrAE対応ガイドラインについて
7月
緩和医療学会2019
8月 
抗がん剤治療の吐き気対策update
9月
胃癌の新しい薬物療法
患者さんへの予後の説明についての意見
Stop Trying to Soften Bad News for Patients
10月
オンコロジーエマージェンシー
①脊椎転移
②トルソー症候群
11月
CART 7回 施行しながら化学療法を行った膵癌がん性腹膜炎症例 腫瘍内科 黒澤先生
CARTの実際        ME 野上さん
12月
抗がん剤・分子標的剤・免疫治療の臨床と近い将来像
           これだけ分かっておけば知ったかぶりができると思う

過去に取り上げたテーマ
#1 
治療の目標ーCureなのかCareなのか
治療の手段ー抗がん剤と放射線と手術、だけではない
治療の対象と選別ー治療の適応と個別化治療
#2  
抗がん剤治療がなぜ大変なのか?ー抗がん薬の薬理学
緩和ケアの基本ー痛みの種類と評価−1
#3 
抗がん薬の種類
緩和ケアの基本ー痛みの種類と評価−2
#4 
抗がん薬と副作用対策と支持療法
痛みの治療に使う薬剤
#5 
抗がん薬の組み合わせー”レジメン”とは
吐き気・便秘の治療
#6
抗がん剤の開発ー臨床試験の意味
呼吸苦・倦怠感の治療
#7 
分子標的治療薬ーバイオマーカーと治療の個別化
コミュニケーションスキル
#8 
オンコロジー・エマージェンシー
精神腫瘍学的な症状と診断ー抑うつ、せん妄
#9
原発不明癌の診断と治療
不眠・抑うつ・せん妄の治療
#10
骨転移の治療(放射線科)
がん患者のリハビリテーション(リハビリテーション科)
#11
脳転移の治療(放射線科)
さまざまな準備(MSW)
#12 
皮膚転移・皮膚浸潤(WOC)
グリーフケア(緩和ケア看護師)
#13 
子宮がん・卵巣がん(婦人科)
死後の処置(緩和ケア看護師)
#14  
在宅ケアの準備・在宅ケアの実際(訪問看護部 生協訪問看護センター)
がん性腹膜炎・腸閉塞
#15  
医療統計  中外
サバイバーシップ・就労支援・子育て支援(緩和ケア看護師)
#16 
胃がん(竹内)
分子標的剤治療中の皮膚ケア(通院治療室スタッフ)
 #17 
肺がん
地域連携(地域連携室) 
#18 
アドバンス ケア プランニング(緩和ケア看護師)
発熱性好中球減少症 
#19  
非オピオイド鎮痛薬の効果と副作用(薬剤部)
患者さんはなにを望んでいるか?
#20  
オピオイド鎮痛剤の効果と副作用(薬剤部)
乳がん(呼吸器乳腺外科)
#21  
神経障害性疼痛の診断と治療(麻酔科)
膵癌
#22 
睡眠導入剤の効果と副作用(精神腫瘍科)
大腸癌
#23  
薬物相互作用(薬剤部)
放射線治療中のケア(放射線治療部看護師)
#24  
腫瘍熱について
緩和ケアに関してのアセスメント(緩和ケア看護師)
#25  
化学療法中の感染症
抗生剤のTDMについて(薬剤部)
#26
経口分子標的剤の副作用
化学療法中の口腔ケアについて(口腔外科)
#27
肺癌の分子標的剤・免疫チェックポイント治療薬        基本のき
#28
リンパ腫の治療

がん薬物療法

がん薬物療法の施行患者は増加しており、主体は外来治療ですが、レジメによっては入院が必要になります。また終末期に関しては、充分な緩和ケアを行い、MSWやリハビリテーション科の協力を経て、入院初期から地域での診療機関と連絡をしながら在宅療養が可能になることを目指しております。しかし少子高齢化など社会情勢の変化をうけて、在宅での介護の担い手も少なく、また弱体化もしており、訪問看護や近医の在宅診療を受けても、患者(と家族)の希望もあり、80%以上は当院での在院死亡となります。

治療開始症例

過去5年間の治療開始症例の内訳は次の通りです
臓器 2014年
新患
2015年
新患
2016年
新患
2017年
新患
2018年
新患
2019年
新患
総計
結腸 7 5 14 6 12 6 61
直腸 4 8 6 4 3 5 40
胃/十二指腸 5 2 11 17 11 16 67
乳腺 2 0 0 2 0 4 32
頭頸部 2 3 5 7 1 1 19
7 1 3 15 1 4 35
膵臓 8 13 13 11 15 17 85
子宮頸部             2
子宮体部             1
卵巣             4
食道 6 8 13 7 9 11 59
肝臓 2 2 1 1 2 1 11
胆道   5 3 6 5 5 24
血液   5 8 4 13 15 42
原発不明 3 6 6 5 6 2 31
皮膚   3     1   4
筋肉・骨     4 2 1 1 8
そのほか         1 4 5
治療不能BSC           6 6
  39 56 73 81 69 87 469
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